今回紹介するのは河合一樹さん(平成20年度卒)!

中高一貫の10期生として本校を卒業した後は

上智大学の文学部哲学科に進み、現在は三重大学

人文学部文化学科の講師として教鞭を取られています!

https://researchmap.jp/kawaikazuki

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......と、こんな風にプロフィールを紹介すると

何せ進学先が哲学科だし、職業は大学の先生だしで

何だか非常にお堅いイメージがするかもですが、

実はこの河合さんは在学中すごくユニークな生徒

知られていて(ちなみにバンドマンでした)、

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参考:旧スクールブログ(2009.1.17)の記事より
センター試験、初日。

今回のインタビューで伺った経歴も波瀾万丈だし、

内容も面白くってそれでいて示唆に富んでるしで

ぜひお読みいただければと思います!(^^)/

※なお、以下の写真と青字の注(写真についてのコメント)
 河合さんの提供によるものです。

 

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1.本校を卒業してから今に至るまでの経緯を教えてください。
 また今の仕事に就こうと思った理由なども教えてください。

2009年3月に近大福山を卒業した後、①上智大学に進学し、②筑波大学で修士と博士を取りました。その後、③職探し期を経て、④2022年に中国にある広西大学で働き始め、⑤今年2025年から三重大学に着任しました。

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※写真注:図書館から研究室のある建物(真ん中の少し茶色いやつ)を見たところ。写真がゆがんでいるのはたぶん骨盤がゆがんでいるから。 

①大学時代(上智大学)

2009年4月に上智大学文学部哲学科に入学しました。上智大学というのは山手線の内側、東京のど真ん中にある日本有数の好立地の大学で、毎日新宿を通って通学するといった感じでしたから、非常に楽しかったですね。

高校時代からやっていたバンド活動もそれなりに頑張っていましたし(全く芽は出ませんでした)、飲み会なんかもよくありました。その結果、大学はサボりがちで単位の取得状況はかなり絶望的でしたが、なんとか四年で卒業できました。

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※写真注:2009年?サウンドウェーブくり。
福山でバンドをやっているときの写真が出てきましたよ。多分高校は卒業したあとだと思う。サウンドウェーブくりはなくなったそうで、残念ですね。

授業はサボりがちでしたが、本を読むのは好きだったので、関連する文献などはそれなりに読んでいましたし、卒業論文はそれなりに頑張って書きました。

②大学院時代(筑波大学)

なぜ大学院に進んだのか、またなぜ上智大学から筑波大学に移ったのかというと、あまり深い理由がある訳でもありません。なにせ卒業がぎりぎりでしたから、あまり余裕を持って就職活動をする時間もなく、さらに当時はリーマンショックと東日本大震災でかなり就活の状況が悪かったころですから、就職に対するやる気も湧きませんでした。

4年生の春学期が終わって、どうやら四年で卒業出来そうだと気づいてから大学院に行くことにしました。上智大学の哲学科は文系の学科には珍しく四人に一人ぐらい進むので、まぁその流れに乗ってというぐらいの気持ちでした。卒論も真面目に書いたし研究もしたかったので。筑波大学に移った理由はもっと簡単で、自分の研究テーマで指導教員を引き受けてくれる先生がいたからです。

さて、修士・博士と2013年から2020年までかなり長く筑波にいた訳ですが、大学院生の生活というのは非常に地味で、紹介できるようなこともあまりありません。基本的には家と大学を往復しながら本を読んで研究を進め、学会発表や論文執筆を行うという毎日でした。

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※写真注:2016年とある学会にて。
大学院生時代。学会で偉そうに話している。花が置いてあるのがいいね。 

とはいえ、大学院生になると自分が所属する大学だけではなく、いろいろな大学の勉強会などに参加するようになるので、それなりに色々な人と関わりながら(=飲み会をしながら)研究生活を送っていました。それなりに研究が進んで発表した論文の数も増えてくると、そろそろ博士論文をとなる訳ですが、さすがに博士論文執筆の年はしんどかったのを覚えています。

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※写真注:2017年ごろ?院生時代。筑波山にて
筑波山梅まつり。ただ遊んでいる写真。一人で写っている写真が少ないのでいまだにプロフィールなどで使っている。プロフィールに仕えそうな写真はちょくちょく撮った方がよい。

 

③職探し期

無事に博士論文を書き終え、2020年3月に博士号を取得しました(博士号を取ってから東京オリンピックを見ることを目標にしていましたが、なんとオリンピックの方が延期されました)。

とはいえ、博士号を取ってもなかなか仕事がないのが研究者の世界です。私は幸いなことに卒業の少し前から中国で三年間研究員として働かないかという話をもらっていたので、2020年9月から中国に行く予定だったのですが、コロナのせいでなかなか行けずに大変なことになります。國學院大學のポスドク研究員や茨城工業高等学校の非常勤講師などもしましたが、フルタイムの仕事がない職探し期に入りました。

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写真注:2019年年末 中山大学(中国広州)
コロナ前の最後の時期に中国にて、この時はこの後大変なことになるとは知る由もなくピースをしている。ダブルピース。結局中山大学(孫文=孫中山から来ている)に所属することはなかった。

幸い2022年度から日本学術振興会特別研究員というものと、中国の今の大学に採用され、最終的に中国の大学で働くことにしました。

 

④中国生活(広西大学)〜⑤帰国・転職(三重大学)

2022年5月に、中国の広西チワン族自治区南寧市にある広西大学の外国語学院日語系に着任しました。広西と言われてもどこかわからないと思いますが、有名な香港やその対岸の深圳・広州のあたりが「カントン(広東)」ですから、その西に「広西」がある訳です。ベトナムと接しているエリアで南国の雰囲気があります。南寧市は人口700万人で空港も地下鉄もあり、なかなか都会ですが北京・上海・広州・深圳といった大都会と比べるとやはり地方都市といった感じです。日本企業もほとんどないので、日本人も10人とかしか住んでいません

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※写真注:2022年 広西大学のイベント
広西大学の外国学院○○周年記念イベントで弾き語りをさせられたときのもの。なぜ中国まで行って弾き語りをしているのかはまったくわからない。

中国に行くことにしたのは、第一には何よりもある程度安定したフルタイムの仕事があったからというのが大きいですが、研究の興味からも一度中国に行ってみたいというのもありました。とはいえ、専門分野が少し違うということもあり、また一生いられるという保証がある立場でもなかったので、今後どうなるかなぁといった感じでした。

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※写真注:2022年以降 広西大学の研究室からの景色。
南国にもほどがある。部屋のエアコンに暖房機能がついていなかった。

そして、この度私の専門分野のポジションがたまたま空いたので、2025年度から三重大学の人文学部に専任講師として着任することになりました。研究者がどのように仕事を探すのかということもなかなか聞くことのない話かと思いますが、さすがにこれを読む人で詳しく知りたい人はあまり多くないでしょうから省略します。

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※写真注:三重大学の図書館。三重大学の図書館であるというアピールがすごい。

 

2.現在のお仕事の内容を教えてください。

ちょうど転職したばかりなので、中国での前職と日本の現職の両方について話しましょう。

①研究者として

どこに所属してどこからお金をもらうかということの前に、お金にならなくても活動の中心として研究をして論文や本を書いています。ミュージシャンやお笑い芸人が売れなくてお金がもらえなくても活動をしているのと同じですね。

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河合さんの論文が載っている本

私の専門は日本の思想に関する研究で、基本的には本や論文を読んで進めていくものなので、特別な施設は必要ありませんが、大きな図書館がないとなかなか困ります。また、自分一人でやる研究活動以外に、他の研究者との共同研究や学会などの運営もあります。その際には諸々の事務作業もやることになります。

何の研究をしているのかということについても少し話しておきましょう。私の専門は日本の思想の研究で、博士論文では本居宣長を中心に江戸時代の儒学・国学について扱いました。かつての日本列島に住んだ人々はどのようなことを考えていたのか、それは東アジアの中で、さらには世界全体の中でどのように位置づけられるのか、といったことを日々考えて暮らしています。それの何が面白いのかと言われると困りますが、何か面白く感じるので十年以上研究を続けることになりました。

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②中国での仕事

中国の大学では日本語学科に所属していたので、中国の学生に日本語を教えるのが主な役割でした。授業としては日本語会話や日本語の試験の対策のほかに、日本の文学や文化に関するものも少しありました。授業以外にはスピーチコンテストや翻訳コンテストなどの指導や、卒業論文の指導などもしました。

中国の大学では日本語学科があるところも多いですし、それ以外でも第二外国語や趣味でという人も含めると、かなりの人数が日本語を勉強しています。最近中国の大学入試で英語以外のいくつかの外国語が選べるようになり、日本語もその中に含まれているので、英語が苦手で日本語で受験するという高校生も増えているようです。

必ずしも自分の専門とする内容について教えていた訳ではありませんが、自分の母国語や生まれ育った国/地域の文化を伝えて喜んでもらえるなら、一定のやりがいがあるような気がしてきます。大変だったのは、やはり海外の大学で働くということで、様々な文化や制度の違いがあったことでしょうか。もちろん、海外生活の刺激が楽しいという面もあるのですが、中国語も中途半端な上に大学の仕組みや制度というのはどこでもなかなか複雑なもので、よく分からないままごまかしていることもいろいろとありました。

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※写真注:中国の大学で送別会をしてもらった時の写真。大変お世話になりました。向こうのネット記事で公開されている写真。 

③三重大学での仕事

まだ着任したばかりなので、あまり具体的な仕事の内容は把握できていませんが、三重大学では自分の専門である日本の思想を教えることになります。専門分野ということで何を教えるかもほとんど完全に自由に決められるので、なかなか気合を入れて準備をしています。研究活動も日本にいる方がやりやすいところもあり、いろいろと研究仲間と話し合ったりしています。

 

3.今後の目標や抱負などを教えてください。

あまり明確な目標もありませんが、とりあえず研究を進めて二冊目、三冊目と本を出していきたいと考えています。地味な研究に対してそれなりに風当たりが厳しい時代でもありますから、自分の研究以外に関連分野全体が盛り上げるように何かできたらいいですね。あと、Youtuberになりたい


4.後輩達に何かメッセージをお願いします。

⑴いい椅子を買う

すでに高校を卒業して十数年が経ち、現役の高校生に何を言っていいものかわかりませんが、全ての人類にとって有用なアドバイスはこれでしょう。本当にいい椅子を買った方がいいです。腰は消耗品なので。中古でオフィス払下げ品を買うのが安くてよい。

あとパソコンの画面も大きくかつ多い方がいい左右分離キーボードを買うのもよい。

 

⑵ダメな時期を楽しく過ごす

「勝ち将棋鬼の如し」という言葉がありますが、人間上手く行っているときは何をしても上手く行くものであまり何も考える必要はないように思います。反対に何をやっても上手く行かない時期というのもあるものですが、そういうときにやけにならないということが思っている以上に大事なような気がします。無理に状況を改善しようとすると悪事に走ったり、悪事とは言わないまでも大いに評判を落とすようなことをしてしまいがちです。やっていることのほとんどはあまり上手く行かない、もしくは上手く行くまでに時間がかかるのでやけにならずに楽しく暮らしましょう

 

⑶真理がわれらを自由にする

これは国立国会図書館の入り口に書いてある言葉ですね。「国立国会図書館法」にも「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」とあります。つまり、何が言いたいかというと図書館に行って本を読みましょう。なんと税金で運用されているのでタダです。学びの館ローズコムもなかなか立派なものです。ダで世界中の一流の著者が書いた本を読んで勉強できるなんて夢のようですね。

大学受験というとテストの点数が気になると思いますが、大学に進学するにあたっては自分で本を読んで勉強する力も大事になります。新書ぐらいの本を読みこなせるようになっておくと大学での勉強も楽しくなるかもしれません。

ちなみに、残念ながら18歳未満は会員になれないようですが、国会図書館の会員(無料)になるとかなりの数の本が国立国会図書館デジタルコレクションで読めるようになるので、卒業と同時に忘れずに会員になりましょう。

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河合さんのインタビューいかがでしたでしょうか?

最初に断っておいたように色々とユニークだったと

思いますが、でも勉強になる話も多かったのではと。

さすがは大学の先生ですね! (´▽`*) 

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※写真注:研究室には本がいっぱいあります。ブルーライト以外も全部カットしたら目にいいんじゃないかと思ってサングラスを買いましたが、暗くて見にくいので使っていません。

ちなみに河合さんは昨年度末にご来校くださり、

著書を学校に寄贈していただきました!

図書室に置きますので手に取ってみてください!

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